か。かつての東京オリンピックが開催された日であることから以前は「体育の日」とされていたが、スポーツで汗をかいた後に入浴すること、入浴が体の健康増進に繋がるという理由から「銭湯の日」にも定められている。「1010(せんとう)」という語呂で覚えている人も多いだろう。戦後の人口増加に伴い、1960年代後半には都内に2600軒以上あったという銭湯。人情味に溢れ、フォークソングやドラマの舞台としても一時代を築いたが、住環境の変化によって利用者が減少。1980年代以降、リラクゼーションや飲食といった付加価値が付いたスーパー銭湯が台頭し、日帰り温泉も人気を博すように。2002年以降は全国各地の岩盤浴スポットが話題を集め、ここ数年は「サウナー」と呼ばれる愛好家の広まりを受けて、空前のサウナブームとも言われている。そんな変遷もあり、経営者の高齢化、設備の老朽化、後継者不足なども相まって2016年には600軒ほどにまで減ってしまった銭湯。それが近年、また脚光を浴びているというのだ。ブームの火付け役は銭湯好きの若者 ゆくこ る情報を発信したことで幅広い世代に達。銭湯メディアを立ち上げ、あらゆ認知された。なかでも埼玉県の「喜楽湯」を営む中橋悠祐さんと湊研雄さん、中西可奈さんは、銭湯好きが高じて運営側になったという強者。歴史ある銭湯を改築し、若者ならではのセンスやサービスでスタイリッシュに生まれ変わった喜楽湯だが、お湯は薪を燃やして沸かす昔ながらのやり方。週3回の漢方風呂や土日の朝風呂が人気で、関東では珍しく無料でサウナが利用できるのも嬉しい。SNSを見て訪れる遠方からの利用者もいるのだとか。中橋さんは「スーパー銭湯や温泉とはまた一味違う、日常生活の延長線上にある癒しの空間に出合えるはずです」と話す。また、東京下町にある1947年創業の「御み谷湯」も2015年にリニューアルした人気の銭湯。半露天風呂から東京スカイツリーが眺められる他、体が不自由な利用者向けの福祉型家族風呂(要予約)も配備。タトゥーがあっても入浴可能で場所柄、力士に会えることもあり、最近は外国人観光客の利用も多いという。体温とほぼ同じ気で、若い女性客も増えた。年齢も性別も国籍も関係なく、皆が集える場所というのはそれほど多くないだろう。元は家の風呂代わりという生活の一部だったはずの銭湯も、いつしかその意義や楽しみ方が変わっていった。た※データは編集部調べ。だ体を温めるだけでなく、昭和レトロブームにのって昔ながらの建築や富士山の壁画を愛でる人もいれば、地域の人々と気軽に交流できる場として新たな存在価値を見出す人も。今や近所の常連客のみならず全国の銭湯を巡る愛好家もいるほどだが、それでも実状は厳しい。「若いお客様に来ていただかなければ今後銭湯が生き残っていくことは難しい」と既出の中橋さん。体だけでなく心が少し疲れてしまった時にも、あの熱いお湯に浸かるだけで癒される銭湯という存在が、これからも人々の憩いの場として続いていくことを切に願う。【喜楽湯】 埼玉県川口市川口☎048‐258‐7689【御谷湯】 東京都墨田区石原☎0 3‐3623‐16955‐21‐63‐30‐8旅びとよ的“旅びと”が目に留めた景色や場所、もの、人に注目するコラム。今回は「銭湯」にスポットを当て、いろいろな視点からその魅力に迫りたい。今、銭湯が“熱い”人はなぜ銭湯に集うのか日本の風呂文化1610月10日は何の日かご存知だろう36度に設定された不感温温泉が一番人喜楽湯御谷湯
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