Vol.50
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恩師に学ぶ“こころ”の養い方高校の担任は美術の先生だった。自由な人で、授業以外の時間は準備室で、自分の絵と向き合っていた。おいしそうなコーヒーの香りがするその部屋が大好きで、自分もよく通った。筆を止めてコーヒーを淹れ、2つのマグカップに注ぐ。「飲むか?」と差し出してくれるコーヒーが、少しずつ自分を大人にしてくれる魔法の飲み物に感じた。 先生と生徒みたいな話をすることは少しだけで、一人の大人として扱ってくれた。先生の悩みも包み隠さず話してくれるので、僕も思ったことを打ち明けることができた。尊敬するところがあって格好いいところもある。でもダメなところもあって弱い部分もある。それが人間なんだよと、口では言わないが、どの先生よりも教えてくれた。卒業が近くなったある日の準備室で、先生が言ってくれた言葉「これから世の中に出ると毎日、美術館に行ける訳でもなく、感動的な映画やお芝居を観られる訳でもない。だから毎日、ささやかな美しさを見つけて感動できる“こころ”を養うことが大切だよ」と。以来、今までは見過ごしてしまうような場面に足を止め、こころの中の感動のコップに水を貯めている。出会った人にいつでも感動のお裾分けができるようにと。紅葉に染まる街を歩いている時、こころの持ち様ひとつで、目に飛び込んでくるすべての景色が美しく感じられた。それはただ通り過ぎる足元にもあると教えてくれた。撮影:林家たい平林家たい平1964年、埼玉県秩父市生まれ。武蔵野美術大学卒業後、林家こん平に入門。2004年からNTV「笑点」のメンバーとなり、お茶の間で人気に。2008年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2016年、NTV『24時間テレビ39愛は地球を救う』でチャリティマラソンランナーに抜擢されるなどTV出演も多数。今後の落語界を担う、今最も注目を浴びる落語家。 21Vol.24林家たい平の

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