旅びとよ的 になり、新しいものが次々に生まれてが幕を明けた。世の中はどんどん便利いる。なかでもファッションや文化、言葉などは特に、時代を象徴するカテゴリーだろう。そうした移り変わりの中で、昭和から平成にかけたレトロ回帰が今ブームだ。よく10年周期で流行が一巡するというが、当時は最先端だったものを懐かしむ人もいれば、若者にとっては逆に“新しい”と感じる。世代や人によって感覚が全く異なるのはなんとも興味深い。 そんなブームの中でも、今回注目したいのが「音楽」。ジャンルもさることながら、音楽を聴く環境や再生プレーヤーなども時代と共に変化してきた。今、カセットテープやアナログレコードが人気再燃の兆しを見せているというので、今回はそこに着目したい。まずは日本の音楽メディアの歴史を辿ってみよう。オーディオが家庭内娯楽装置として親しまれた1950年代から、音楽が日常の一部として定着するきっかけになったのが、1962年のカセットテープ発売だった。1970年代には「ウォークマン」が登場し、歩きながら音楽を楽しめる環境に変わったことで多様性が生まれた。1980年代初頭にCDが発売されるとやがてMDも登場。2002年にはCDのシェアが9割を占めるまでに。2000年を過ぎてから、スマートフォンの普及と共に音楽ダウンロードや「サブスクリプション」と呼ばれる定額制音楽配信サービスが台頭。2010年以降はまたCDのシェアが半数に減り、音楽はダウンロードという形のないものに変化していった。そんな時代の流れに逆らうようにアナログメディアに注目が集まっているそもそもの発端は、海外だった。アメリカのメーカーがカセットテープを販売し、アーティストも楽曲をカセットテープで発売したことが大きな話題となり、日本でもブームに。大手CDショップではアナログレコードやカセットテープの特集コーナーを設けるほどで、日本のアーティストも音楽配信やCDリリースと併せてアナログ盤やカセットテープを販売するケースが出てきている。2015年には、東京にカセットテープ専門店も登場。住宅街の一角に店を構える「waltz(ワルツ)」では、約6000本のカセットテープを扱う。ジャンルは多種多様で、訪れる客層もカセットテープ未体験の10代からはカセットテープやレコード、音楽マガジンのバックナンバーなどが並び、奥にはきちんと試聴スペースもある。カセットテープのポップなビジュアルや再生プレーヤーのレトロ感が妙に味わい深く、若者が思わず「かわいい!!」と発してしまうのもわかる気がする。この店のオーナー、角田さんは以前Amazonで音楽事業に携わっていた経歴を持つ。「世界で誰もやっていないこと」「自分にしか出来ないこと」を考えた時に思い付いたのが「カセットテープ」だったという。 「ハイレゾ音源」など、より高品質な音を求められる時代に、アナログならではの温かみ溢れる音が楽しめるカセットテープやアナログレコードが、今では日本の音楽カルチャーに新しい風を吹きこんでいる。音楽の楽しみ方がさらに広がり、それがまた新たな時代の象徴となっていくのだろう。【waltz 】東京都目黒区中目黒4‐15‐5☎0 3‐5734‐1017月曜定休“旅びと”が目に留めた景色や場所、もの、人に注目するコラム。今回のテーマは「アナログメディア」。今だから逆に新しい、その魅力を紹介する。音楽メディアの系譜ブーム再燃の理由13時~20時 90代のシニアまで実に幅広い。店内に30年間続いた平成が終わり、新時代15“古くて新しい”アナログメディア
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