“旅びと”が目に留めた景色や場所、もの、人に注目するコラム。今回は、「万年筆」にスポットを当てる。進化する万年筆さまざまなメディアで紹介され、年々人気が高まっている文房具。その中でも、ここ数年で話題になっているのが万年筆だ。長文を書いても疲れにくいことや、好みに応じてインクを使い分けられるといったメリットがあるが、一方でメンテナンスが面倒というデメリットもある。しばらく使わない時はペン先を洗ったり、インクを吸入したりする必要があり、そのまま放置してしまうとインクが固まって書けなくなることも。しかも高価なので、いつかは欲しいものの手が届かない筆記具という印象が強かったが、今それが大きく変わっていることをご存知だろうか。2018年でちょうど創立100周年を迎えた老舗文具メーカー、パイロットの営業企画部雜村(さいむら)さんにお話を聞いた。 「私達が調査を行ったところ、50代男女の9割以上が万年筆を使ったことがあるのに対し、20代は半数以上が使ったことがないという結果になりました。ところが、『万年筆が欲しい』と考えている世代は意外にも20代が一番多かったのです」万年筆におしゃれなイメージを持ち -- -- ながら、なかなか購入に至らないという若年層、中でも子供向けの万年筆として2013年に発売されたのが「カクノ」。シンプルな構造ながら万年筆の使い方や書き味を手軽に実感でき、価格も1000円(税別)とリーズナブル。今までの万年筆のイメージを覆したうえ見た目の可愛らしさも相まって、子供のみならず若い女性にも大人気の商品となったのだ。 「試しやすい価格帯の商品が発売されたことや、色とりどりのインクが増えたことによって間口が広がり、さらにワンランク上の万年筆を求めて来店される方も多くいらっしゃいます」万年筆の人気についてそう話すのは、東京・青山のペンブティック書斎館の杉田さん。定番であるドイツのペリカンやイタリアの万年筆が売れ筋だそう。初心者におすすめなのは、15種類ものペン先から用途や好みで選べるパイロットのカスタムシリーズ、インクを入れて2年ほど使用しなくてもインクが乾くことなく、サラリと書き出せる「スリップシール機構」(インクの乾燥を防ぐ完全気密構造のキャップ)を採用したプラチナ・センチュリーなど。書斎館では、店オリジナルの万年筆や、一般では☎︎ 03☎︎ 03目にすることがない過去の限定品、廃盤商品なども充実。眺めているだけでワクワクしてしまう空間だ。杉田さんに、お気に入りの万年筆を見つけるコツやメンテナンスについて伺った。 「万年筆は同じ種類でも一本一本違う書き味を持っています。書き手の癖や好みがあるので、実際手に取って試してみることが大切です。また、一番のメンテナンスは書くこと。毎日一文字でも書いて、ご自身のペン先に育ててあげてください」希望の書き味や見た目などがあればスタッフに尋ねるといい。書斎館なら、きっとお気に入りに出合えるだろう。直接書く機会が少なくなっている昨今、あえて文字の持つ美しさを体感できる万年筆を使うことで、新たな世界が広がるかもしれない。あなたにとって生涯の一本を見つけてみては。パイロットコーポレーション3538ペンブティック書斎館34003780(お客様相談室)3377旅びとよ的文房具ブームと共に万年筆の魅力※上のペン先はNC(ノンカラー)。正しいペンの向きがわかる“えがおのマーク”が特長の「カクノ」。13
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