2018秋_vol46
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ジアの人懐っこさと優しさにあふれた笑顔が印象的な一人の女性が、同じアジアでも遠く離れた日本で頑張っている。日本の外国人技能実習制度を利用し、今年の1月に日本の地を踏んだ。そして日本の生活習慣、法律などを学び、日本の企業に技能実習研修生として正式に採用された。外国人技能実習制度とは、日本の企業において発展途上国の若者を技能実習生として受け入れ、実際の実務を通じて実践的な技術や技能・知識を学び、帰国後に母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とした国際協力のための公的な研修制度。3年間、日本企業の雇用のもと、様々な職業上の技能を習得・習熟するのだ。彼女はビルクリーニングの資格取得を目指している。接客業にも興味があり、帰国後は習得した日本語と資格を発揮してホテルで働くことも視野に入れている。その夢のために3年間は母国には帰らないと覚悟を決めた。大反対した家族も、旅立ちの日には号泣で見送ってくれた。さて、自分の夢のために日本を離れたり、自分の興味のある職業を選択したり、そして就職する大半の日本の若者とは事情は異なる。彼女のようにこの制度を使って日本を訪れる若者は、一様に家族に仕送りをし、家族のみならず親戚一同の生活を担っているケースがほとんどだ。彼女も、自分の夢も描きつつ、家族や親戚を助け、世の中をほとんど知らない自分の故郷の人々に、日本で見聞きしたこと、体験したことを話して聞かせたいのだという。一昔前の日本がそこにある、と言った人がいたが、女性であっても働くことに貪欲なのはもちろん、日本で色々な経験をしたい!と実にタフなのである。休日は、今も欠かせない日本語の勉強の合間を縫って、料理をしたりクッキーやプリンなども作ったりして過ごすこともある。同じ時期に、同じ志を持って一緒に来日した仲間は、今や兄弟になったと笑う。家族への毎日の電話が欠かせなかったホームシックも、仲間がいたから乗り越えられた。あと2年半である。手元には何もないから、自分の人生はすべてがこれから…余計なことは考えない、迷わず挑戦する…たどたどしい日本語の奥で聞こえた凛とした美しい強さとギャップに、胸が震える。      ア文:晴日夜更けのRecollectionコラム1920ASIAN POWER&BEAUTY旅びとよ

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